北政所という記号ーーNHK 大河ドラマに着目して
今回、北政所という歴史上の女性をNHK 大河ドラマで描かれてき「記号」に着目して意味づけを行いたいと思う。
NHK大河ドラマで北政所を演じた女優(抜粋)
おんな太閤記(第19作) ねね:佐久間良子(主人公)
徳川家康(第21作)北政所:吉行和子
秀吉(第35作)ねね:沢口靖子
葵德川三代(第39作)北政所:草笛光子
利家とまつ~加賀百万石物語~ (第11作) おね:酒井法子
功名が辻(第45作) 寧々:浅野ゆう子
江~姫たちの戦国~ (第50作) おね: 大竹しのぶ
軍師官兵衛(第53作) おね:黒木瞳
真田丸(第55作)寧:鈴木京香
どうする家康(第62作)おね:和久井映見
豊臣兄弟(予定)おね:浜辺美波
イメージ的には力強い前に前に前に出ていく快活な女性というよりも、清楚で可憐で、少し言い方には気をつけなければならないが「良き時代の日本人女性」というようなイメージが意味づけられているような気がする。こう考えたのにはキャスティング以外にも次のような理由がある。
・淀君との比較
淀君は豊臣を最終的に滅ぼすに至った原因を作った女性で、彼女は豊臣家の権威を最後に握り、言い方は悪いが、日本の「歴代悪女」の中でも計算されている女性である。このような戦略家の淀君と比較して、おしとやかな女性というイメージで(あくまで先入観は無視したイメージのラベリングであることは先に言っておく)北政所は描かれているのではないか?
・豊臣家の最後の良心としての北政所
豊臣秀吉は天下を取った後、気が狂ったような存在になったのはよく描かれる描写である。それに説教するような姉御肌の女性として、北政所は機能していたように思える。秀吉の死後は豊臣の五大老の世話役にもなり、面倒見はかなり良かったという説がある。このような豊臣家の最後の良心的な存在として、後に敵対する徳川にも一目置かれていたという話もある。こうしたイメージから、前に前に積極的に出ていくタイプではないが、どしっとしたいざという時は力を発揮するような立派な女性がイメージとして描かれているような気がする。
・戦国時代の終わりを見守った女性としての北政所
彼女は豊臣家が滅亡した後も生き残り、江戸時代まで生き残ったという説がある。こうした中で豊臣秀吉という誰もが天下を認めた男よって正室として選ばれたものの、その後豊臣家は崩壊していき、戦国時代の最後の最後まで「戦い」を導いてしまった存在としての豊臣家という一族を距離を取りながら見守った存在でもある。こうした稚拙な言い方であるが、強い女性としてのイメージも北政所には描かれているような気がする。
これらから考えると、NHK 大河ドラマで北政所を演じた女優は、その当時の清楚で可憐な女性の意味づけがなされている人が、いざとなると頼りになる存在としての彼女を演じてきたとは言えないだろうか? このような北政所の記号が女優の歴代の顔ぶれにも現れているとは言えないだろうか?
時代は女性の活躍を暖かく迎える(ようになってきている)令和時代である。この時代に北政所はこれまでとは違って、少し積極的な記号になっていくような予測もできる。しかし、その土台にあるのは、豊臣家の最後の「砦」としての優しくも強い女性のイメージであることを期待する。個人的には秀吉を弱々しい腐ったような男性として描き、それを引っ張っていくような魅力溢れる女性としての北政所も期待する。そのような男女関係は「現代」の中でも頻繁に見られるのではないか(間違っていたらごめんなさい)? このようにややカルチュラルスタディーズの知見を少し取り混ぜて、NHK大河ドラマにおける北政所について、その記号に関して妄想してみた。おしまい。
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